サッカーファンの皆さん、こんにちは。
皆さんはどんなサッカーが好みでしょうか?
攻撃的なサッカーでしょうか?
それとも守備的なサッカーでしょうか?
ポゼッションを志向するサッカーでしょうか?
それとも一瞬の隙を突くカウンター重視のサッカーでしょうか?
サッカーも時代に沿って移り変わり、それと共にその時代における、またその国やチームの伝統ともいえる戦術も続々と登場してきました。
トップレベルのチーム同士の戦いでは、緻密な計算も含めた戦術が各チームで見られ、個の力を抑え込むほどの大きな要素ともなります。
サッカー戦術におけるこれまでの変遷や最新のサッカー戦術を知っておくと、サッカーを観る時にさらに楽しく観戦できそうですよね!
ということで今回は、
- サッカー戦術:変遷の歴史
- サッカー戦術:現在のトレンド
- まとめ
の順にお伝えしていきます。
サッカー戦術:変遷の歴史
サッカーの戦術の変遷の歴史を、その当時のトレンドワードと共に紹介していきます。
キック&ラッシュ
サッカー発祥の地、イングランドで1863年にFAが設立され、統一ルールが作られました。
この当時は“オフサイド”のルールがまだ適用されていなかったため、“2-1-7”といった超攻撃型のフォーメーションが主流でした。
守備の意識が低く、とにかく点を取ることに重きが置かれ、前線に多く選手を置いて、とりあえずロングボールを出して、ボールに激しく当たっていくというスタイルでした。
一時期はプレミアリーグの代名詞として、その名残がありましたね。
WMシステム
1920年代に、現在のオフサイドルールが適用されるようになり、前線に選手を多くかけるスタイルは徐々に無くなり、DF、中盤のバランスをより求めた“3-2-2-3(3-2-5)”のフォーメーションが主流になってきました。
攻撃への意識が高く、守備の意識が低い中で、攻撃と守備の役割分担をはっきりさせ、DFは2枚から3枚への3バックに変化し、3バックの前に2枚のMF、そして前線は2枚が下がり目の位置に、残り3枚はワイドに広がる配置となりました。
前線はアルファベットの“W”の形に、中盤とDFラインは“M”の形のように配置されたことから、“WMフォーメーション”と呼ばれ、1950年代前半にプスカシュらを擁して無敗を誇ったハンガリー代表がこのフォーメーションを採用していました。
4-2-4
ここまでは3バックが主流でしたが、1958年のワールドカップ・スウェーデン大会で初優勝を遂げたブラジル代表が“4-2-4”のフォーメーションを採用し、4バックが登場しました。
MF2枚が攻撃と守備に関与し、攻撃5枚もしくは6枚、または守備5枚もしくは6枚といったように、戦況に応じて役割を変えていくシステムであり、“WMシステム”からさらに進化を遂げたものになりました。
1958年のブラジル代表の前線はガリンシャ、ペレ、ババ、ザガロといった超攻撃的な選手が揃っていたこともあり、攻撃と守備の役割分担ははっきりしており、現在のセレソンのような、サイドバックの攻撃参加はほとんど無く、守備の意識も強くなってきました。
カテナチオ
守備の意識が高くなってきた1950年~1960年代にかけて、イタリア勢が採用してきた守備的な戦術が、イタリア語で“閂(かんぬき)”を意味する“カテナチオ”です。
相手FWをDFがマンツーマンでマークし、最後尾のディフェンダーはマンツーマンディフェンスを突破したFWに対応するという守備的な戦術であり、1964年と1965年にUEFAチャンピオンズリーグを連覇したインテルがこの戦術において代表的なチームとして挙げられます。
近年のイタリア代表は攻撃的なサッカーを展開していますが、イタリア代表の根底には“カテナチオ”の伝統が染み込んでおり、ファビオ・カンナヴァーロやパオロ・マルディーニ、ネスタといった世界屈指のDFが2000年代初頭はその強みを遺憾なく発揮していました。
トータルフットボール
それまでは守備の選手は守備、攻撃の選手は攻撃と、役割分担がしっかり分かれていたサッカーでしたが、1970年代のオランダで登場してきたのが、役割分担とはっきり分けることなく、各選手が流動的にポジションチェンジをしていく“トータルフットボール”です。
この“トータルフットボール”の基礎となるのが、高い位置からのプレッシングと、スペースを活用したポゼッションです。
スペースを活用することをまず求めるため、各選手には高い技術だけでなく、戦術眼や判断力も求められますが、1970年代前半にはアヤックス監督のルイス・ミケルスが、ヨハン・クライフなど世界的なプレーヤーを中心として、チャンピオンズリーグ3連覇を成し遂げ、1974年W杯では準優勝に終わったものの、“トータルフットボール”はサッカー界において大きな影響を与えました。
ポジションを固定するサッカーから、選手が流動的に動いていくサッカーへと移り変わり、現代サッカーの戦術の基礎となっています。
ゾーンプレス
トータルフットボールでの高い位置からのプレッシングがより守備的に進化したのが、1980年代後半から1990年代初頭にかけてACミランで採用された“ゾーンプレス”です。
“4-4-2”のフォーメーションを基本とし、ディフェンスラインをフラットに並べ、ディフェンスラインから前線までの距離を短くし、選手間の距離を一定に保ち、ボールホルダーに対して数的優位を作り出し、プレッシングの威力を高めていくという戦術です。
当時ACミランの監督だった名将アリーゴ・サッキが採用し、バレージ、マルディーニ、ライカールト、ファンバステンらを擁し、“グランデ・ミラン”と呼ばれる一時代を築きました。
ティキ・タカ
1990年代から現在まで続く、ショートパスを繋ぎながらボールを保持し、ポゼッションを高めていくサッカーが“ティキ・タカ”です。
1990年代前半ではトータルフットボールの体現者であったヨハン・クライフがバルセロナ監督時代に、トータルフットボールのスペースを活用したポゼッションに、細かいパスワークを用いた戦術を採用し、この戦術は後のバルセロナの哲学ともいえるものに浸透し、他のスペインのクラブチームや代表にも影響を与えていきました。
そしてEURO2008でのスペイン代表や、2000年代後半から2010年代前半にかけてのジョゼップ・グアルディオラ監督が率いるバルセロナで、この“ティキ・タカ”が大成し、世界のサッカー界に大きな衝撃を与えました。
グアルディオラ監督自身は「バルサはティキ・タカなんてやっていない!それは完全にメディアに作られた言葉だ!」と否定していますが、シャビ、イニエスタ、メッシをはじめ、体格的には劣るものの、ずば抜けた技術を持ち、華麗にパスをつないで相手を圧倒していくスタイルは、日本をはじめ多くのクラブや代表で、目指すサッカーの方向づけとなりました。
🧮🔢#ティキ・タカ🔢🧮
2011年に #バルセロナ が見せた圧巻のプレー👏👏 2つのゴールが生まれるまで、一体何本のパスが通ったでしょうか❓🤔#ラ・リーガ #バルサ@fcbarcelona_jp pic.twitter.com/KF9EuYiAoe
— ラ・リーガ (@LaLigaJP) January 30, 2019
ゲーゲンプレス
2010年代初頭から、多くのドイツ人の指揮官が採用してきたのが、相手にボールを奪われた瞬間に、激しくボールを奪い返していく守備的な戦術である“ゲーゲンプレス”です。
ユルゲン・クロップ監督が2010-11,11-12シーズンでブンデスリーガ連覇を成し遂げたドルトムント、そして現在に至るまで指揮を執るリバプールで採用している他、ラルフ・ラングニック、ユップ・ハインケス、ユリアン・ナーゲルスマンなどがこの戦術を取り入れています。
単に前線から積極的にプレスを掛けていく“ハイプレス”とは異なり、相手にボールを奪われた直後に激しくプレスを仕掛けていき、ビルドアップの余裕を与えないのが“ゲーゲンプレス”です。そのため選手には、運動量はもちろんのこと、戦術眼や状況判断能力の高さなど、あらゆる要素が高水準で求められていきます。
ポゼッションサッカーに対抗し得る戦術として、この“ゲーゲンプレス”は現在でもドイツ国内をはじめ多くのチームにも導入されています。
Gegenpress. pic.twitter.com/c4qd1zRGzZ
— Club Regista (@ClubRegista) April 3, 2020
サッカー戦術:現在のトレンド
ここでは、サッカー戦術における現在のトレンドワードをいくつか紹介したいと思います。
ポゼッション型ショートカウンター
2010年代初頭に大きな力を持っていたポゼッションサッカーですが、2014年ブラジルW杯でスペイン代表をグループステージ敗退に追い込んだオランダ代表やチリ代表に見られたように、前線から積極的にプレスを掛けていき、一気にカウンターに繋げていくショートカウンタースタイルが主流となってきました。
さらにこのショートカウンターも“ポゼッション追及型”のスタイルへ進化を遂げ、単にパスを繋げるだけでなく、スペースを作り出すためにパスを繋ぎ、縦に速い攻撃を追求するスタイルが現在のサッカー界において主流となっています。
ポゼッションに関してですが、狭い局面で繋いでいくスタイルではなく、両サイドを幅広く使い、様々な選択肢を用意しつつポゼッションサッカーを展開していくスタイルも多く見られるようになってきました。
例として、ブライトンやアーセナルなどが挙げられるでしょう。
【ブライトン ビルドアップ】
どこにスペースができるのか。
誰が空くのか。
自分がどこに動くのか。これらを全員が分かってる。
サポート、認知の原則が100点に近い形で行われている。流石デ・ゼルビ👏pic.twitter.com/LpGy21ogQx
— MIUMA (@program75410827) January 16, 2023
最後方からの正確なビルドアップで敵陣近くまでボールを運びつつ、前線の両ウイングまで運び、さらにスペースを作り出すことにより、チャンスメイクしていきます。
ブライトンでは、右がマーチ、左が三笘、アーセナルでは、右がサカ、左がマルティネッリといった個人で打開できる選手を置き、カットインからのシュートも選択肢に入れつつ、自らタメを作り、相手を揺さぶっていきます。
このようなワイドに展開したポゼッションサッカーをすることにより、サイド深くからのシンプルなクロスはほとんどなく、中央寄りからのクロスで得点する場面も多く見られます。
また最後方からのビルドアップをメインとしつつ、ロングフィードで攻撃を作っていくスタイルもあります。
例としては、ナポリが挙げられるでしょう。
オシムヘンにロングパスはデザインされた攻撃だから好きpic.twitter.com/N5S9utqWWe
— mrts_14 @YouTube (@mrts_14) February 19, 2023
最後方のDFラインでのボール回しから、爆発的なスピードと強靭なフィジカルを持つ1トップのオシムヘンにロンボールを送り、チャンスメイクしていきます。
オシムヘンがそのまま持ち込む場合もあれば、ポストプレーでクラワツヘリアやロサーノといった両ウイングや、中盤のジェリンスキの攻撃参加を待つパターンもあります。
単なるロングフィードからの攻撃ではなく、最終ラインから中盤にかけてのビルドアップやパスの供給も優れており、爆発前の予兆として多くのサッカーファンを惹きつける魅惑的な攻撃スタイルを築き上げています。
カタールW杯では、ポゼッションでは優位になっていたものの敗れたという試合が多く見られました。
引き続きポゼッションサッカーに何か一つの要素やアクセントを加えることが、これからのトレンドとなっていくでしょう。
トランジション
“切り替え”を意味する“トランジション”の速さは、現代サッカーにおいてゲームを左右する要素となります。
このトランジションには、“守備→攻撃”の“ポジティブ・トランジション”と“攻撃→守備”の“ネガティブ・トランジション”の2種類があります。
この2種類どちらでも、攻撃に一気に繋げるだけでなく、相手の自由にさせない点でも必要な要素となり、前線の選手でも守備への切り替えの速さが求められます。
トランジションの速さを追求することで、ポゼッションで支配されていたとしても、一瞬の隙をついてカウンターで持っていける場合もあれば、相手の陣形の崩れや隙を突いてゴールを奪う場合もあります。
個の力で劣るとしても勝機を見いだせる要素として、これからもこの“トランジション”は多くのチームで戦術のトレンドとなってくることでしょう。
【フットサルとサッカー】
トランジション(切り替え)
・ボールロスト後のプレスと積極性、ジャンプ
・連続した再調整 pic.twitter.com/eDravQ6amp— 村松裕樹 Yuki Muramatsu (@yuki_muramatsu_) July 14, 2017
アイソレーション
特定の味方プレーヤーをわざと孤立させてスペースを作り出して、1vs1で攻撃をさせる戦術が“アイソレーション”です。
このアイソレーションには、特定のエリアに人数を集中させるオーバーロードや、偽サイドバック、偽9番によるタイプなど様々なものがあります。
最近ではジョゼップ・グアルディオラ監督がマンチェスター・シティの監督に就任後、この“アイソレーション”を大成させてきました。
ショートパスでつなぐビルドアップで特定のエリアに密集させ、逆サイドをフリーにして勝負を仕掛けさせる状況を作り出すオーバーロード型では、WGにマフレズやグリーリッシュなど、個で打開できる選手を配置させることにより、その脅威を増してきました。
また偽サイドバックでは、今シーズン途中まで在籍していたカンセロがその役割を大きく担い、サイドに張るだけでなく、中央に入ってビルドアップに参加し、積極的に高い位置を取り攻撃参加し、“カンセロ―ル”という言葉も生み出すほど、大きな存在感を出してきました。
他チームでは、ジンチェンコ(アーセナル)、マズラウィ(バイエルン・ミュンヘン)などが偽サイドバックの代表格として挙げられます。
もはや偽サイドバックでもないジンチェンコの認知・サポート#Arsenal #zinchenco
pic.twitter.com/3nvt1OCEyd— NOUS FOOTBALL (@nousfootball) January 25, 2023
そして昨シーズンのマンチェスター・シティの代名詞となったのが“偽9番”です。
昨シーズンは主にフォーデンやフェラン・トーレスがその役割を担ってきましたが、前線に張るだけでなく、中盤まで下がりスペースを作り出すことにより、ウイングや中盤の選手が走りこむスペースを作り出すことが出来ます。
フィル・フォーデンの偽9番。
— とんとん (@sabaku1132) November 13, 2021
今シーズンは、絶対的なストライカーであるハーランドが加入したことにより、偽9番のシステムは取り入れられてはいませんが、偽9番システムが導入されている頃から、スペースを作り出すための動き出しやパスワークの意識がチーム内で徹底されていることにより、枚数が少なくてもゴールへ無駄なく直結する動きへとつなげていくことが出来てます。
この偽9番システムですが、今シーズンも開幕からマンチェスター・ユナイテッドやバイエルン・ミュンヘンが導入しようと試みましたが上手くいかず、結局本職がCFの1トップの形で落ち着いています。
アイソレーションのシステムを確立させるためには、かなりの時間と戦術理解度を要しますが、今後また新たな形でのアイソレーションが登場する可能性もあり、楽しみですね。
まとめ
いかがでしたか。
今回は、サッカーの戦術に焦点を当て、変遷の歴史と現在のトレンドについて触れていきました。
今後もあっと驚かせるような戦術を作り出す指揮官がまた出てくるかもしれませんね。
個々の質の高さはもちろん重要ですが、チームスポーツである以上、スター選手の寄せ集めだけでは簡単に勝てないのがサッカーですね。
現在のサッカーシーンを見ても、そのことがよく伝わるのではないでしょうか。
90分の試合の中でも、一つのプレーや選手投入、戦術の変更などで大きく局面が変わってきます。
ターニングポイントがどこになるのかを常に見極めようとする指揮官同士のせめぎ合いにも注目ですね。
いつもありがとうございます!
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